其の42 北朝鮮と鉄火丼

先週、北朝鮮がミサイルを発射した。ノドンだ、テポドンだと巷では言っている。テポドンがミサイルだと認識している分にはまだまともだが、テポドンが、「鉄火丼」や「親子丼」と同類項と思いこんでいる人がいて、ミサイルの発射と同じくらい腰が抜けそうになった。しっかりしてほしい。少しましな人で「鉄砲ドン」という漢字を当てると思っていた人もいる。
これだけ知れ渡ると、今更改めて人に聞きづらくなる単語である。
「テポドン」とはそもそも北朝鮮の地名であり、「大浦洞」と表示していた。これは旧名で、今では咸鏡北道(ハムギョンプクド)花台郡舞水端里(ファデグン・ムスダンリ)と言う名前になっているようだ。
今回発射された7発のミサイルうち、テポドン2だけは、旧地名の大浦洞から発射された。
北朝鮮北東部に位置し、延辺朝鮮族自治州やロシアと接する所だ。韓国統一省の統計によれば、韓国入りした脱北者の半数以上が咸鏡北道の出身である。その比率は年々上昇し、03年上半期は71%。耕作地が少ないため厳しい食糧難に見舞われており、国境に近いことが脱北者を増やす理由といわれる。
では、ノドンとは。この発音は韓国式発音が世に通ってしまった。北朝鮮ではロドンと発音する。かつては、「労働」と地名の「蘆洞」が同じ発音であるために、ミサイル名を「労働」としたところもあるが、明らかに間違いである。「蘆洞」は、同じ咸鏡北道安辺郡の日本海沿いの町である。
これは、アメリカCIAなどが、発見場所の名前を取ってテポドンとかノドンとかいっているだけで、ミサイルの正式名ではない。北朝鮮では白頭山1号とか、木星とか、火星7号とか呼んでいると見られるが、最高機密であり、情報は漏れてこない。因みに白頭山は、北朝鮮の2700メートル級の山である。
北朝鮮が保有するミサイルは、今のところ長距離型の「テポドン」、中距離型の「ノドン」、短距離型の「スカッド」の3種類と考えてよい。
射程1500キロ以上の能力をもつテポドン1号は、1998年に日本上空を越えて三陸沖に着弾した。中距離型のノドンは、日本全域を射程に収める。発射されれば、10分以内に日本に着弾する。93年に日本海に向けて発射実験した。
短距離型のスカッドは、中東諸国に輸出し、外貨を稼いでいるとされる。射程600~1000キロの新型スカッドも開発しているという。私は、第1次湾岸戦争の時、イラクが発射したスカッド・ミサイルが頭上を通過していくのを、ヨルダンのアンマンで取材中にみた。恐怖のミサイルだった。
テポドン1と2以外のミサイルは移動式で、発射準備に余り時間がかからないため発射の事前探知は難しい。
またまた、米国や日本を交渉に引きずり出すための(主としてアメリカを照準にしたものだが)砲弾外交の一端か。専守防衛ラインの域を越えられない日本の対北朝鮮安全保障政策。米国に日本国民の安全をゆだねる以外に「タマ」はないのか。
鉄火丼は人が食う物だが、テポドンは人を食うものなのだ。北朝鮮の砲弾外交は超危険と言わざるをえない。
そんな折、韓国中央日報の論説委員がフランスのジダン頭突きを例に出して、勇ましい発言をしている。(2006年7月14日付け)
”ジダンの頭突きは、ジダンを「W杯を台無しにした愚か者」ではなく、「最も大切なものを守るためにはいかなる代価もためらわない人」というイメージとして全人類に深く刻み込まれた。(略)
しかし最近のわれわれの状況は、それこそジダンのように頭突きをしてみたい心情がこみ上げてくるほどだ。 何よりも「北の先軍が南の安全を図っていて、南の広範囲の大衆がその恩恵を受けている」と発言した南北閣僚級会談の北側代表、権虎雄(クォン・ホウン)内閣責任参事の口に頭突きをしたいという心情は隠すことができない。(略)
私が仮に統一部長官なら、その場でいろいろと下手な比喩で禅問答をするよりも、眼鏡を外して権惨事の口、すなわち金正日の録音機に頭突き一発を食らわせていたはずだ。ジダンは祖国のW杯優勝と自身のゴールデンボールも放棄する覚悟で自分と家族の大切な名誉を守るために頭突きを飛ばした。 だが世界は決して彼の頭突きを非難しなかった。むしろ絶対に譲れないもの、絶対に許してはならないことに対し、すべてをかけて断固たる態度を見せた彼の姿に、内心、拍手を送ったではないか。 ジダンの頭突き!だからそれがうらやましいのだ。 チョン・ジンホン論説委員。”













