其の41 ジュラ紀の杉の木
(この記事は2005年10月14日付けの週刊ジェンタ紙に掲載した記事に加筆したものです)シドニーの西150キロの世界遺産に登録されているグレーター・ブルー・マウンテンの一角の極秘の場所で発見されたウォレマイ・パイン。通称キング・ビリーの販売第1弾が、今月の23日(2005年)に始まる。
発見されたのは1994年9月。発見者は、ニューサウス・ウェールズ州の野生生物局のデイビッド・ノーブルさん。
ノーブルさん、いかにも高貴そうな名前。彼が、熱帯雨林の中の渓谷の急斜面をロープを使って下降していた時に、偶然この古木の群生を発見した。
独特の枝分かれをした珍種のシダのような深緑の葉をもっていた。葉の表面は、泡だったチョコレートのようだったという。落ちた枝を拾って、NSW州の野生生物局とシドニー王立植物園に鑑定を求めた。
ノーブルさんと現場に戻った係官の心臓は高鳴った。これまでにみたこともない種類のものだった。まさに絶滅したと思われていた樹木だったのだ。化石ですら1億7500万前のものである。発見場所と発見者に敬意を表して、学名は、ウォレマイ・ノビリスとなった。
「発見時は、生きたディノサウルスを発見したような興奮でした」と、王立職分園のカーリック・チェインバーズ教授は、BBCに話している。 ウォレマイ・パインの起源は2億年に遡るジュラ紀のもの。ウォレマイ国立公園のどこかに百本ほどが生存し、野生最古の木は、高さ四〇メートルで、樹齢千年を超えているという。
ウォレマイ・パインは、ナンヨウスギ科に属し、ノーフォーク杉、モンキー・パズル杉と親戚であるという。
野生では幹の直径が一メートルを超え、高さ四〇メートルまで達する雄大な針葉樹だ。多くは複数の幹をもつ。垂れ下がり方は珍しく、春には先端が淡いアップルグリーンになり、初夏には古い深緑色になる。
杉の歴史は、日本でも古い。屋久島では高齢な屋久杉をとくに「屋久杉」と呼び、若い屋久杉を「小杉」と 呼んでいる。杉の平均的な寿命は5百年余りといわれているが、屋久杉では2千年を超える巨木が見られる。一本の木が成長するまでには、多くの時間がかかる。折角育てても、日本では、スギ花粉症で全くの嫌われ者だ。
この杉の商業化を目的に繁殖が行われてきた。クインズランド森林当局と民間業者と共同で、一九九八年から繁殖計画が始まった。目隠しをされた科学者をヘリコプターで吊して、種を取ることを試みたがうまくいかなかった。時間をかけた研究で、増殖の方法は確実になった。ウォレマイ・パインは、マイナス五度から四五度までの気温に耐える耐寒性の植物だ。
暑い気候でも生育し、光を受けると成長は特に速まるらしい。逆に、光の少ないアパートの中でもよく育つので、観葉植物としても庭のない人たちにも朗報である。特別な機会の贈り物として、さらにはクリスマス・ツリーとしても最適だという。
今年のクリスマスから、イルミネーションが飾り付けられたウォレマイ・パインをみることがふえそうな気がする。さて、一体いくらで買えるのだろうか。
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