其の26 ロストワールド ブルーム
(この記事は、2005年11月4日付けの週刊ジェンタに載ったものに加筆したものです)皆さんは、西オーストラリア州のブルームに行かれたことがあるだろうか? ロストワールド・ブルームの恐竜の足跡がたくさん見られるのだ。
テレビ朝日シドニー支局長時代に、インド洋に面するブルームを中心に南北80キロにわたって恐竜の通り道が発見された。 「ニュースステーション」はすぐ行けという。シドニーからパースまで3300キロ。ブルームまで1700キロ。さすがにすぐには飛んで行けなかった。
足跡は、2本足の長さ数センチの小さいものから、大きいものは4本足のブロントサウルスやステゴサウルスの竜脚類の恐竜など1・7メートルにも達する。この大きなものはアボリジニーの聖地にあって取材できなかった。
ブルームは、大昔、川のデルタ地帯にあり湿地だった。川の水が恐竜には絶好の住みかになった。泥地帯を示す化石も発見された。恐竜が歩く時にめりこんで泥地帯がひび割れて、そのまま化石になったものが残っている。年代の違う三層になったひび割れの化石もある。 湿地帯であったからこそ、1億年以上も前の足跡が残った。
ガイドからオリントポッドかマッタバラサウルスのものといわれたが、足跡の化石に腰を下ろすと在りし日の恐竜の活動が彷彿としてくる。
ガイドのポールは、化石の発見に相当の時間を費やした人だ。発見されてからは、早速化石ツアーを始めた。海岸沿いのたくさんの化石をみせるために、引き潮の時間に合わせる。ポールは、化石を案内した後は、足で化石に砂をかけて人にわからないようにする。けちな根性ではないのだ。ある年、原住民の聖地で、機械を使って、ステゴサウルスの貴重な足跡を盗んだ化石ハンターがいたから。

「3本指の足跡、巨大な恐竜、ステゴサウルスは原住民には大切です。今は、原住民の法律と文化だけでかろうじて守られているので、保護は絶対必要だ」という。(左の写真)
発見者の一人、トニー・ソルボーン教授(クインズランド大学)は、「大変貴重な化石群だ。1億2千万年~1億5千万年前にかけて生息した恐竜の生態や習性を解明する大きな手がかりになる」と言う。
国立遺伝学研究所の第2代所長木原均博士は名言を残された。「地球の歴史は地層に刻まれ、生物の歴史は染色体に刻まれている」と。
同時に、インドにあるシダ科の植物で通称ウィリアムソニア・ディアーナの化石もみつかった。とても小さいものだが、しっかりと残っている。左の写真の中央にそのシダの化石が残っているのがわかるだろうか? クリックして拡大してみて頂きたい。かつては、インド大陸と地続きだったことをはっきりと伺わせるものだ。恐竜たちが栄えている間に、オーストラリアは他の大陸と切り離されてしまったのか。
人々を1億2千万年以上の悠久の昔に引き戻す恐竜の足跡の化石の数々。恐竜の足跡の数は数千と言われた。多種の恐竜の化石がみつかったのは、世界的にも珍しいという。
地球上に生物が誕生して数十億年の間に多くの生物種が盛衰を繰り返してきたが、インド洋を前にした海岸で化石の数々を実際目の前にすると、体が震える。否、海岸に立つと、恐竜たちが海岸を通ったその振動までが足下から伝わってくるような気がする。
一度でも、大きな恐竜の足跡の中に自分をおいてみてはいかがだろうか。インド洋の日没は、あまりにも美しい。そして、なお多くの化石が近くの海面に沈んだままだ。
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