Weekly Go 豪
負け犬の遠吠え 友の会シドニー支部

 

Thursday, June 08, 2006

其の28 サッカールーズ 32年前

(この記事は、2006年6月2日付けの週刊ジェンタに掲載したものを、加筆修正したものです。丸山社長の許可を得て転載しています)

 オーストラリア・サッカー・ルーズにとって、実に32年ぶりの世界舞台サッカー・ワールドカップ登場が目前になった。左のマスコット・マークは、サッカールーズが初出場した1974年大会のもので、もうこれを覚えている人もそれほど多くはない。

 この4月22日。シドニー・マーティンプレースに、1974年年当時に出場したサッカールーズの面々が集合した。レイル・ラシック監督以下20名ほど。

 バスでやってきた彼らに、道行く人が手を振る。シドニー中心部のサラリー・マン、オフィスレディーが列を作ってサインをねだり、写真撮影を求める。振り返ってみれば、これまで彼らがこんな歓迎をどこで受けたであろうか。オーストラリア・サッカー史に燦然と輝く偉業だったのだが、それに値する賞賛は受けなかった。わずかに、帰国した時に出迎えた1500人のファンの群れだったとか。

 「これが他国だったら、われわれの銅像くらいできていたろうね。残念ながら、ここはオーストラリアだ。しかし、われわれがどんなことをしたか、認められ始めたのはいいことだ。あれから32年かかったということは、われわれがやったことのマグニチュードのすごさを測ってもらえると思うよ」と元選手。

 下の写真は、サッカールーズキャプテン、ピーター・ウィリアムズのプレーだ。

Posted by Picasa苦しい時代を思い出す人もいた。

 1974年と言えば、ベトナム戦争終結の前年である。選手の中には、ベトナム戦場経験者もいた。「われわれは、ベトナム戦争にいかなくてはならなかったんだ。コカ・コーラとバナナで生き延びたようなもんだよ。あそこじゃ水は飲めないからね」と言ったのは、レイ・リッチモンドさんだ。

 オーストラリアのW杯初出場は、レイル・ラシック氏が監督に就任して四年後の1974年。今日のように32チームと違って、当時は16チームの時代であった。

 「もしオーストラリアが勝ち上がるようなことがあれば、俺はフットボールをやめて、ニワトリの面倒をみるよ」と、馬鹿にしたのは、同じグループでチリ代表ヴァルデス主将だったという。

 結果は2敗1分けでグループで最下位。実力の差が出た。

 今日に見るような、金持ち選手で構成されていたわけではなかった。カネはもらっていたが、とても今日の金額からははるかに遠いものだった。大きな会社と契約出来る時代でもない。ナショナル・チームに参加してやっと1日20ドル。そこから税も引かれる。選手は、貿易関係者、鉱山労働者、セールスマンといった本業を持ちながら、フットボールを副業にした代表チームだった。情熱がなければ出来ない貢献だった。

 MFだったマンフレッド・シェーファー氏(ドイツのメディアから最優秀選手の一人としてあげられた)は、シドニー郊外で毎朝牛乳の配達をしていた。だから、午後にしか練習時間がなかった。

 全員が被雇用者だったために、国際試合や海岸遠征のたびに、雇用主に休暇の申請をしなければならなかった。

 彼らの歴史は、ささやかに人々の賞賛の言葉と写真の中に凝縮されている。オーストラリアのサッカーは、ヒディンク監督というよき指導者であり、魔術師を迎えて、“明治維新”を迎えた。まだまだ脆弱ではあるが、観客の動員数も増え、スポンサーも付き、全てが躍動的になってきた。その折角のチャンスに、Aリーグの試合を有料テレビでしか見られなくしたのは、大きな過ちだと思う。喉から手が出るほど、カネがほしかったということか。順調に、伸びっていってもらいたいものだ。

 6月12日の日豪戦。キックオフは、こちら時間の夜だ。

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