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負け犬の遠吠え 友の会シドニー支部

 

Tuesday, January 10, 2006

其の3 スコットランドの正月

ホグマニーの思い出

 2006年 明けまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 私がBBC放送局に勤務していた時、スコットランドでは、クリスマスよりも正月の方を祝うとBBC日本語部のジョン・ニューマン部長が教えてくれた。そこで家族旅行を兼ねて行ったのが、スコットランド・ハイランドのピトロッホリの町だった。

 スコットランド全体が、大晦日の夜から、人の住む所、ホグマニーという飲めや歌えのどんちゃん騒ぎになった。人々は、大晦日から元旦にかけて、親戚や友人を訪問する。かつて、夜中12時を回って最初の客(First Footers)が、背が高くて、髪の毛が黒くて、ハンサムで、なおかつ石炭1個・パン1個・ウィスキー1瓶を持って来れば、その年はいい年になるとされた。そして、石炭をくべ、パンを食卓にのせ、ウィスキーを家長のグラスに注いだという。いまでも、その風習は残している。

しかし、最初の客がかなり色白の男性であれば、その年は凶だという。これは、おそらく、昔、色白のヴァイキングが犠牲者にした人の将来の繁栄よりも、略奪に関心があったせいでもあろう。スコットランドのホテルでは、いまやこのホグマニーを商戦として扱っており、どこのホテルもニュー・イヤーズ・パーティは、満員の盛況だそうだ。

 私はBBCから紹介されたある家庭を訪問した時、ガイジンとしてもお許しを頂いて、ウィスキーしか持参しなかったが、ファースト・フッターが黒い髪の人は大歓迎なのだと言って、黒髪の日本人を歓迎してくれた。スコットランドで昔から起きたこと、それは、この愛すべき風習が喧嘩と二日酔いに終わり、知己を失った人も多いと言われる。
 
 ホグマニーのルーツは、冬の厳寒期の太陽と火の信仰に遡ると言われる。古代ローマの冬の祭りを発展させたものでもあった。やがて、ヴァイキングがキリスト降誕祭をもってくると、それがスコットランドでは知られるところとなり、冬の祭りは地下に潜行した。そして、17世紀に再び表にでてきた。しかし、厳格なスコットランドのプロテスタントは、カトリックのミサを廃止して、すべてのエネルギーを新年の挨拶に注ぎこんだのである。実際、1950年代までは、スコットランドでは、クリスマスは通常の労働日となっていた。こんにち、1月1日はイギリスの休日であるが、スコットランドだけは1月2日まで延長されており、多くの二日酔いに国家的休息を与えているのである。いな、むしろ、国家的保護によって、2日酔いが3日まで持ち越されたと言った方が適切である。従って、ホグマニーは、スコットランドでは遙かに重要な行事になっているのである。当然、贈り物は新年に行われる。

 ホグマニーの語源も諸説ある。アングロ・サクソンのホーリー・マンス(聖なる月)や「新たなる朝」という言葉から由来しているというものや、フランス古語の「贈り物」に源がある人もいる。
 この日は、欧州最大のストリート・パーティが、エディンバラで行われるのだ。「オールド・ラング・サイン」を皆で歌う。2番はテンポをあげて歌う。お馴染み、スコットランドの生んだ偉大な詩人ロバート・バーンズの作詞だ。彼の詩句は、ベートーヴェンやメンデルスゾーンにまで影響を与えた偉大な詩人だった。

 日本では「蛍の光」である。「蛍の光」は四番まであるが、第二次大戦以降は二番までしか歌わない。「筑紫(つくし)のきわみ、みちのおく、海山(うみやま)とおく、へだつとも、その真心は、へだてなく、ひとつに尽くせ、国のため」。 この歌は、日本の侵略・植民地化に対して独立を目指した朝鮮半島の抗日運動では、「わが大韓万歳!」と歌われた。
 
 原詞とは全く異なる詞にロバート・バーンズも驚いたに違いない。


 そして、元日の夜。人々は、牛皮運び、棒で牛皮を叩き、叫び、妖精や悪魔除けのまじないを繰り返して家を囲む。

 何はともあれ、新年だ。決意を大事にしたい。およそ4000年前、バビロニアの人たちは、借用していた農機具を所有者に返すことから新年を始めた。新年の決意。今年は皆さんの何でしょうか?
 
 今年も、このコラムのご愛読をぜひお願いしたい。(三田村 元樹)

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